黄泉と現世を走る列車

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 カタンカタン……カタンカタン……。
 リズムカルに音を立てて走る列車。その中には多くの妖が乗車していた。
 鉄道の予定にはない列車。それは電気ではなく己の霊力で動いていた。それ自体が一つの妖なのだ。
「ええ、見ましたとも。素晴らしい光景でした」
 その運転席。そこに備え付けてある電話に話しかける者がいた。
 それは間違いなく人間ではない。何故なら人間には頬が割けるほど大きな口はないからだ。
「人間に送られて黄泉に向かう古妖達。いやはや、大した数でした。お陰で寝る暇もない」
 それは間違いなく古妖ではない。同属が大量に死んだというのに、まるでそれを楽しむように笑っているのだ。
「人間共もかなり力をつけてきましたからね。こちらも負けてられませんよ。暴れたい奴らが……こら、運転席に入ってくるな」
 運転席に入ってこようとする妖を制するように命令する声。その声に従い、運転席に入ろうとした妖は身をひそめる。
 ――妖の知能は高くない。ランクによるが、精々が『人間に似た言葉』を叫ぶ程度だ。
 だがこの存在は明確に言語を話し、しかも不測の自体に対応している。そこには明らかに知性と呼ばれるものがあった。
「ええ、継美サンのような愚手は犯しませんよ。彼女は人間を舐めすぎてました。『窮鼠猫を噛む』とはよく言ったものです。……ええ、人間の言葉ですよ。知りません?」
 言って笑う何か。電力を必要としない電車にある電話。それは当然電力をエネルギーとしない。
 霊的な通信。それを為すのがこの列車の能力の一つ。否、妖の能力の一つ。
「綾香サンも気を付けてくださいよ。油断すれば寝首を書かれかねません。ヨルナキサン? あの人はむしろ分かったうえで狩りをしている。鉄平サンはむしろそれを楽しんでいる」
 ヨルナキ。それは北の大地で猛威を振るう大妖の名前。
 それだけではない。継美といえば第二次妖討伐抗争で討ち取られた大妖だ。綾香、そして鉄平という名前も、現在知られている大妖の名前だ。
「戦いの基本は機動力です。十分な戦力を迅速に配置する。それが大事なのです。基本的な力で人間が妖に勝てるハズがない。予知夢を見られる前に移動して攻めればいいだけです」
 それは――明らかに覚者の存在を意識した発言だった。そんな知識を有する何か。
「では参りましょう。人間の街に妖を届けに。特急料金はサービスです。お客様方、そろそろ駅に到着します。お忘れ物のないよう、網棚、椅子の下など、今一度お確かめください」
 その列車の名前は、ケモノ四〇六号。
 妖を乗せて走る大妖。それが走り抜けた地は、多くの死人が出ると言われた黄泉路行列車。
 数名の夢見の予知速度を超える動きで街に入り、その扉が開く。
 数多の妖の咆哮が街に響き渡った。

 その日、一都市を守る覚者組織とそこに住む人間達が引き裂かれた。
 次の停車駅は、不明である――