力と正義の数字

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遡ること一月半ほど前―――

「古妖狩人が覚者組織により壊滅されました」

 この騒動は憤怒者組織『イレブン』内で広がり、大きく波紋を呼んだ。
 かなりの規模を持つ組織がわずかな期間で壊滅されたこともあるが、それだけの戦力を有する覚者組織が近畿に存在していたことが大きな衝撃だった。
 そして今まで秘していたその組織がそのベールを脱いだのだ。
 イレブンの幹部たちはその危険性を考慮し、緊急で集まることになった。
「……先ず被害状況だが」
 会議を取り仕切る男は資料を配りながら説明する。この会議の為に不眠不休で動いており、疲労が顔に見える。
「古妖狩人が行っていた十一月以降の研究はすべて覚者に押さえられた。そして兵装や兵隊、資金など多くを奪われた」
 会議室をざわめきが支配する。その多くは覚者への恨みだ。
「そしてその組織が近畿に存在することが判明した。
 その存在を露にした以上は相応の迎撃能力を有していると思われる」
 不意討ちとはいえ古妖狩人規模の組織を壊滅できる戦力。そして不意を討つには難しい相手。
「つまり、我ら《冥宗寺(みょうしゅうじ)》の出番ということですか?」
 雄々しく挙手し、立ち上がるのは一人の男。剃髪して袈裟を着ている男は、臆することなく議長を見た。
「鍛えられし我らが門徒、源素の力を持つ者などに後れを取らぬと自負しています」
「ニエット(いいえ)……かの悪魔(ジヤヴォール)を滅するのは《悪魔祓い(エグゾルツィーズム)》の役目」
 静かに挙手するのは青い修道服を着たシスター。訛りのある日本語だが、はっきりと告げる。
 仏教系ベースの《冥宗寺》と基督教ベースの《エグゾルツィーズム》。両者が対立するのは、宗教上の相違ということもある。
 だが両組織が高い戦闘力を有した対覚者殲滅組織であることが最大の理由だ。イレブン内でも屈指の戦闘力を有する彼らは、己の強さを主張するように常に対立していた。
「異国の徒が。鉛に頼った汝らの出る幕ではない」
「……格闘(ヴォルバー)で悪魔が討てるなら、苦労はない」
 睨みあう二人。だがそれを制するように議長が口を挟む。
「両者そこまでだ。今回両組織の出番はない」
 その言葉に異論をはさもうとする二人にかぶせるように、スーツを着た男が告げる。
「そういうこと。何事も暴力で解決なんてスマートじゃないよ。資金はまだ潤沢にある」
「覚者の強さは少しずつ増している。未来を予知し、それなりの戦力を有する組織に正面から挑むのは愚策。
 社会的に封殺し、じわじわと弱体化させるのが一番だ。所詮覚者は犯罪的かつ暴力的な存在。力に溺れ、すぐにボロを出す」
 その隣に座っている白衣を着た人物が補足するように言葉を足す。
 二人はイレブン幹部という肩書を持っているが、表の顔は社会的に地位のある存在だ。覚者台頭世間の荒波を乗り切る手腕は侮ることはできない。
「《社長》と《ラプラスの魔》の言う通りだ。ここは様子を見ることにする」
 その意見に武闘派の二人は反論しようとするが、
「積極的に攻めるのを禁ずるだけだ。連中に出会ったら交戦しても構わない。情報を入手できれば御の字だ」
 妥協案として告げた言葉に無言で同意する。彼らは覚者との戦いを経験している。不用意に攻め入ることが愚であることは身をもって理解していた。
「私達が争う意味はない。妖や覚者により虐げられる者達の光となるべく、我らは活動するのだ。
 くれぐれもそのことを忘れないでくれ」
 妖や覚者が世に現れて四半世紀。世間は乱れ、争いは絶えない。
 虐げられる者の『力』となるべく、虐げられる者の『正義』となるべく。
 イレブンはそのために存在しているはずなのだから――。