流布する呼称

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 1988年に初めての妖が現れてから、神秘に関する事件は増加するばかりだ。
 覚者と呼ばれる能力者が生まれ、その力をもって犯罪を行うものもいる。
 その覚者を廃するために、危機感を抱いた非覚者が武装し始める。
 当初は妖のみに対応していたAAAの業務は、そういった暴徒を押さえるためにも割かれることになる。
 
 犯罪率の増加は、AAAを始めとした日本という国の繁栄妨げになる。
 それは国民数の減少という事もあるが、国家への信頼が揺らぐという事もある。国を治める者が信用できなければ、国外に逃亡する者も増えてくる。少なくとも、そうすれば覚醒や妖などの問題に悩まずにすむのだ。
 故に国家はこういった妖犯罪や能力者関係犯罪に対し常に頭を悩ませることになり、連日会議を行い対策を思案していた。

「……とはいえ、力で押さえつけるには無理がある」
「第三次妖抗争のダメージからAAAが回復しきっていないのがきついな」
「つまり、力以外で犯罪を規制しなければいけないわけか」
「ではこういうのはどうでしょうか?」
 官僚の一人が示した案は、集団用語による仲間意識の向上だった。
 
「集団用語?」
「はい。犯罪者をおかす覚者非覚者を一般の覚者非覚者と区別することで特別性を持たせれば」
「成程。精神的、社会的な区分けを行うということか」

 会議に居る人間はその意図を察し、言葉を選んで喋り出す。
 要は犯罪を犯すものを言葉で差別しよう、という提案なのだ。
 人間は社会に属している。それは集団でいることの安心感を得る為でもある。
 そこからつまはじきにされたくなければ、犯罪を犯すな。そういう事である。

 それを誰も口にしないのは、差別がよくないことだと知っているからだ。
 社会からつまはじきにされた人間がどういう扱いを受けるか。それは歴史を紐解けばいくらでも例が出てくる。
 そして差別戦略がとても効果的だという事も、歴史が証明していた。

「だがその用語は何処から用意する?」
「AAA内の用語を使えばいいのでは?」
「それは拙い。国家に関わる組織が差別に関わったとあらば、後の運営に影響が出る」
「では、別の組織の用語を使えばいい。最近擁立された覚者組織があっただろう。確か名前は――」
「FiVE、でしたな。では早速」

 ――計画は迅速に動いた。
 FiVEの用語を聞き、それを警察関係やマスメディア関係に流布して密やかに世に流し、少しずつ世間に浸透させる。
『隔者(リジェクター)』『破綻者(バンク)』……そういったFiVE内の単語が世間に浸透していった。
 言語の周知は、犯罪者等の活動を狭める効果が生まれる。犯罪率抑制の効果は、確かに生まれたのであった。

 だがこれが根本的な解決には繋がらないことは、誰もが理解している。
 神秘の謎はいまだ解明されず、妖や覚者は確実に増え続けているのだ。