悪意の拡散 ―冥宗寺―

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●回想
 ものは使いよう、事はやりよう。
 冥宗寺と名乗りをあげた以上、持ち逃げした麻薬をどこかで換金すればすぐに足がつく。警察とヤクザの双方が目を血眼にして嗅ぎまわるだろう。ファイヴもそれを理由に突っかかってくるに違いない。上手くやれないこともないが、余計な面倒事は増やしたくなかった。
 そう、イレヴンは犯罪者組織ではない。発現者たちに対抗する人間のための組織なのだ。

 冥宗寺は保護した志摩兄妹を先に車に乗せて待たせると、自分よりも年上の弟子を呼び寄せた。

「ファイヴの連中が警察に行く前に、あの子たちが見つけた『落としもの』を組事務所に届けてこい」

 ヤクザたちは組の制裁を恐れてそう簡単に口を割りはしまい。ファイヴの覚者たちも、実際にケースに入った麻薬を見たわけではない。子供たちが勝手に、見つけたケースに『麻薬』が入っていると思い込んでいるだけ……。

「絶対に中を開けてみるな。お前はただ、届けるだけでいい。ヤクザが礼を差し出して来たなら、それが何であれ黙って受け取れ」

 そう、我々は落とし物を持ち主に返しにいくだけのことだ。


●悪巧み
 (「それにしても厄介な……」)
 ファイヴの妖もどきたちが戦う様子をまじかに見て、冥宗寺は改めてファイヴという発現者組織に脅威を感じた。いまのうちに潰しておかねば、と思う。
 (「何かよい方法はないものか」)
 笛のような風の音が走り去るとともに、電話ボックスの周囲でようやく芽吹きだした草が地にお辞儀するようになびいた。
 空は冬が忘れていった寒気のために青く冴えて、晴れあがっている。
 前方より小学生の一団が歩いてきたので、冥宗寺は端によって道を譲った。
 すれ違いざま、まだ幼い声が耳に入った。

「アイツらのせいだ。せっかく出たレアモンスターだったのに」

 小さな手に大事そうに握られていたのは、出たばかりの携帯ゲーム機だった。通信機能付きが売りで、発売と同時に完売となり、いまではほぼ入手不可能な品だ。親が金を持っているのだろう。

「アイツらが調子に乗ってぶつかってきたんで怒ったら、急に通信が途切れちゃった。あわてて元の姿に戻ったけど……エラーが出て……ゲットできなかったんだ」

 離れていく黒いランドセルの群れを見送りながら、冥宗寺は笠の下で細く笑んだ。

「ほう、面白いことを聞いた。そうか、やつらは覚醒時に電磁波を発するのか」

 日本全土を覆っていた電波障害が、ある日突然、解消された。
 電波障害の原因が、古妖による封印結界よるものであったことは一般に広く知られていない。そう、まだ知られていないのだ。
 発現者が覚醒時に発する電磁波を何とかして増幅することができれば、二十数年間続いてきた電波障害の原因をやつらに押しつけることができるのではないか。
 例えば、ペースメーカーを埋め込んだ人の近くで増幅装置をつけた発現者が覚醒すれば、ペースメーカーの機器に狂いが生じて止まってしまうかもしれない。
 原発などの危険な施設の近くで増幅装置をつけた発現者たちが暴れたら、妖怪汚染よりももっと深刻な事態が引き起こされるかもしれない。
 ごく僅かな確率でよい。ゼロでなければいいのだ。人々に一瞬でも疑念を持たせることができたなら、発現者のイメージは著しく損なわれるだろう。

「ふむ。あまり気乗りしないが……あの男女に話を持ちかけてみるか。作れぬというならば、想像力のない電卓バカとせいぜいバカにしてやろう」

 整った顔を真っ赤にして拳を握りしめ、ぷるぷると震える姿が安易に想像できる。
 ああ、それはそれで面白いな。

関連依頼:
『魂の価値、命の重みを計るものは』(ST:そうすけ