悪意の拡散 ―ラプラスの魔―

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 不幸にも冥宗寺の期待は外れることになった。
「何を言い出すかと思えば……」
 突然やってきて、突然言いたいことを言うだけ言った冥宗寺に、ラプラスの魔は呆れを隠せなかった。
「ナンセンスだね」
 と即答。
「何ぃ!?」
 整った顔を真っ赤にして拳を握りしめ、ぷるぷると震える姿を見せたのは冥宗寺の方だった。
「俺の考えにケチを付けるのか!」
「そんなに怒鳴らないでよ。イレブン内のIQが下がる」
「はっ……あいきゅ……」
 あまりの言葉に一瞬言葉を失う。その隙を突いて、魔物は思案を巡らせた。

 カクシャが発生させる電磁波。その存在は魔物も聞いていた。
 いわば妨害電波ともいえるその電磁波は、ちょうどカクシャ達が通信機器を使えない程度の範囲で発生すると言うが――。
「そんなのテクノロジーが発達しちゃったら混乱なんてどう考えても一時的なものじゃないか」
 と指摘。技術の発展は日進月歩だ。彼の身体がショックでよろけた。
 

 ――それにしても。

(電磁波がそんな簡単に減衰するってのもね……)
 うるさい坊主が黙った所で魔物はそれが気になった。

 電磁波は空間そのものを媒介に伝わる波だ。主に空気中の酸素や水蒸気などの影響を受けて減衰するのが一般的であり、そこまで容易く減衰するということは、水や酸素等の大気中の物質に吸収されている可能性が高い。

 物質に、吸収される。

 ……ああ、その手があったか。

 その瞬間、魔物はそっと微笑んだ。今までの少年の声には不釣り合いなまでの、艶を含んだ女性の笑みを淡い桃色の唇に浮かべて。
「折角君が無い髪の毛を振り絞って考えてくれたアイデアだ。使ってあげるよ」
「これはハゲじゃない!」
「誰もハゲなんて言ってないじゃないか」
 悪戯好きの子供のように嬉しそうに笑ってから、魔物は椅子から立ち上がってホワイトボードに図を書いた。

「つまり、携帯電話のマイクロ波で騒ぎ出す連中と同じ奴を沢山作ればいいんだよ」
「ふむ。それで……」
「電磁波っていうのはエネルギー伝達の一形態だ。電磁波が吸収されるってことは物質にそのエネルギーが吸収されてる訳。で、この電磁波の吸収先は空気中の酸素や水蒸気であることが多い。酸素に吸収されると酸素が活性酸素になる。これが細胞内のDNAを傷付けて悪性腫瘍を生む。水に吸収されれば細胞内の水分ってことで電子レンジに掛けた卵みたいに……」
 ラプラスの魔にしてみれば丁寧に説明したつもりだったのだが。業を煮やした冥宗寺の口から出たのは
「ええい! ごちゃごちゃうるさい! 結局覚者の出す電波が害悪になればいいのだ!」
 という怒鳴り声。魔物は心底呆れたように溜息をもう一度ついた。

「これ、この国でも高校生が理解することだよ? 君それでも大学出てる? 学士様?」
「な・ん・だ・とぉ?!」

 この後また二人の間で大喧嘩になった(というよりも魔物が彼で遊んでいるのであった)のだが、それについては字数が足りないので割愛する。
 尚蛇足であるが、これから数日間冥宗寺は上機嫌な魔物に「学士様」と呼ばれることになったことは付け加えておこう。

 ――とにかく。
 序曲は冥宗寺の考えたアイデア。それによって『カクシャが発する電波』の存在を無辜の民に印象付ければいい。
 その後大々的に言ってやるのだ。

 覚者の発する電磁波が、いかに有害であるかを。

 すべては魔物と僧侶が描く、理想郷、ないしは極楽浄土の為に。

関連依頼:
『≪悪意の拡散≫思慮の圏外』(ST:そうすけ
『≪悪意の拡散≫想定の圏内』(ST:そうすけ
『≪悪意の拡散≫3つの概念』(ST:品部 啓
『≪悪意の拡散≫2人の思想』(ST:品部 啓

⇒悪意の拡散 ―冥宗寺―