【Pixie】イルカレースと水鏡の遺跡


●水鏡の遺跡
 理央、御菓子、樹香、澄香、ミュエル、ゲイル、ラーラ、結唯の八人は無限樹の遺跡をクリアした。
 そのまま水鏡の遺跡に挑戦することもできたが、一度装備を整え直したいということでピクシーの隠れ家へと戻ることにしたのだった。
 無限樹の話によれば、一度クリアしたなら試練をパスして水鏡の遺跡まで送ってくれるのだそうだ。
「遺跡そのものが無限樹っていう古妖の一部だったなんて、少し驚きだね」
「その一部を分け与えて貰えたことに感謝しなくちゃ」
「問題はこの『無限樹の勾玉』をどうするかじゃな」
「ヒナポポちゃんはどう思います?」
「ンー?」
 ひとの肩の上でうたた寝していたピクシーは目をこすってあくびをした。
「なんのはなし?」
「勾玉は……とても価値のあるものだから、勝手に持って行ったらだめかなって……話だよ」
「欲しいなら貰っちゃえば?」
「そういうわけにもいかん。勾玉を授かったのは『人と妖精が仲良しだったから』なんだろう。それを裏切ることになる」
「一度ふわりんのおじいさんにお話を聞いてみてはどうでしょうか。えっと、おじいさんの名前は……」
「さあ、まだないんじゃない? 鳥とか花とかにもないでしょ?」
「たしかに、学名はともかく呼び名は定まらないことが多いですね……」
 そもそも人間が人間の言葉で区別しようとしただけなので、ピクシーの価値観からすればそれらは同じものなのかもしれない。
「だが知り合ったのも何かの縁だ。もし人間界に来ることがあれば力になれるだろう」
「「……」」
 ボーリングに連れて行っても一投もせずに時間潰してそうな結唯が積極的にピクシーに接しようとしている。
 理央はデレたな、と思った。
 樹香は可愛いところがあるな、と思った。
 御菓子はコクリコちゃんはどんなベッドで寝てるのかなと思った。
 こほんと咳払いする澄香。
「とにかく。話をしてから考えましょう」
「聞いてくれると、いいけど……」

 じーちゃん(仮)はミュエルたちを見るなり『どひゃー』と言って生まれたての子鹿ごっこをしていた。
 このままじゃ話にならないのでピクシーが寄っていって、暫くじーちゃんの背中に小石を積む遊びをしたあと、人間には分からない言語でなにやら話し始めた。
 暫くするとふわふわと戻ってきて。
「あげるって!」
「軽いな……」
 サングラスを指で押す結唯。
「だってうちらが持ってても枕にもなんないし」
「それはそうだが……よし、分かった。大事に使わせてもらおう。ラーラ、持っておいてくれ」
 ゲイルに小箱を渡され、ラーラは頷いた。アテンドの中にねじ込むのはちょっとどうかと思ったので懐に入れる。
「これはファイヴに持ち帰って調べて貰いましょう。その後で、改めて水鏡の遺跡に挑戦です!」

 ……というのが、前回までのお話である。
 再び無限樹の遺跡へやってきたピクシーと八人の覚者たちは約束通り試練をパスして水鏡の遺跡へ送って貰えた。
 その送り方が『大きく開けた無限樹の口の中へ滑り込む』だったので軽く恐怖はあったが、なんだかんだ無事に到着……したと思ったら、そこはなんと水の中だった。
 どこを目指しても全部水。空気のある場所がない。
 このままでは窒息してしまうと焦った彼女たちだが、すぐに危機は去った。
 なぜなら水鏡の遺跡には『呼吸ができる水』が満ちているからだ。
 呼吸が出来ることに安堵していると、上(だと思う)の方から数匹のイルカが泳いでやってきた。
 あらまあイルカさん。などと思っているとイルカが水中でも伝わる声でこう言った。
「ようこそ水鏡の遺跡へ。ここへ人間が来るのは何百年ぶりかねえ! 説明は後だよ、アタイについてきな!」
 イルカさんじゃなかった。イルカネキだった。

 イルカネキのあとをついて泳いでいくと、ようやく水面に到達した。
 空気のある場所に顔を出せばあたりの風景に驚くだろう。
 なぜならあたりにはヴェネチアを彷彿とさせるような水路町が広がっているではないか。
 決定的な違いは建物がすべて水面に浮いているということだろう。
 建物の窓からは服を着たイルカが顔を出し、こちらを興味深そうに見つめている。
「驚くだろう。アタイらはもうここに何百年も暮らしてるのさ。で、人間が来ることがあったらそいつらに『資格』があるかどうか試せって言われててね。面倒だろうけど、付き合って貰うよ」
 是非もない。
 そう応える覚者たちにイルカネキはウィンクして言った。
「そうさね、ならアタイと水上レースをしてもらうよ!」


■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.レースに参加すること
2.なし
3.なし
 こちらシリーズシナリオとなっております。
 妖精と神秘の遺跡を巡るシリーズ第三弾。水鏡遺跡編です。

 皆さんはイルカネキの試験として水上レースに出場して頂きます。
 水上レースはこのイルカ水上街で行なわれる恒例行事らしく、数名のイルカが出場しています。
 ルールは皆さんが想像するような町中ボートレースそのもので、水上を走って規定のコースを一週し、そのタイムを競います。
 皆さんはイルカじゃないので『自力で走る(水上歩行・改などが必須)』『手こぎボートを貸して貰う』『契約したイルカさんの背に乗せて貰う』の三つからエントリー方法を選んでください。

 コースは一番大きな橋である『メインアーチ』の下からスタートし、まずは大きな水路を進みます。
 第二に『浮石ゾーン』。水面に1メートル大の石が沢山浮いているので、潜るか飛ぶかどちらかで対応しましょう。
 第三に『迷路ゾーン』。迷路のように張り巡らされた細い水路を進みます。大会のたびに水路のが組み変わっているので誰も最短ルートを知りません。
 第四に『激流ゾーン』。前から横から上からひたすら激しい水流を浴びせられます。移動がかなり難しくなるでしょう。
 ラストは『最終直線ゾーン』です。スタート同様シンプルな直線水路です。

 ルールは要約して三つ。
 ・水面から3メートル以上離れないこと。潜りすぎや飛びすぎはペナルティになります。
 ・危険なショートカットをしないこと。建物内を抜けたりするのはナシです。
 ・他選手への妨害は『なんでもあり』。本当になんでもありだとイルカネキが言いました。ちなみにイルカさんたちは口から水鉄砲を飛ばす程度の能力があります。ノックバック効果がありますが、ダメージはありません。

 成功条件はご覧の通り『レースに参加すること』です。
 イルカネキもレースに参加しろとだけ言っていて、勝てとは言っていません。
 察するに、ここの住民たちが皆さんを見てどう思うかを計ろうとしているのだと思います。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年07月11日

■メイン参加者 8人■

『世界樹の癒し』
天野 澄香(CL2000194)
『五行の橋渡し』
四条・理央(CL2000070)
『ホワイトガーベラ』
明石 ミュエル(CL2000172)
『赤き炎のラガッツァ』
ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)


 レース開始直前。イルカの街は大賑わいを見せていた。
 周囲の建物や道からイルカたちが顔を出し、スタートを待つ参加者たちを眺めている。
 一番の注目はなんといっても覚者たちだろう。
「よーい――スタート!」
 フラッグが振られた瞬間、最も派手なスタートダッシュをきったのは天野 澄香(CL2000194)だった。
 スタート直後に設置された第一の難関浮き石ゾーンを、なんと背中からはえた翼で飛行することによってスルーしていったのだ。
 その横では、『鴟梟』谷崎・結唯(CL2000305)が水上歩行によって軽々と浮き石を避けて走って行く。
「なんだい、最近の人間は飛んだり水面を走ったりするのかい。おっどろいたねえ!」
「それだけじゃないぞ」
 ボートを勢いよくこぎ出した『金狼』ゲイル・レオンハート(CL2000415)は、ギラリと眼前のエリアをにらみ付けた。浮き石の位置をかなり遠くまで一気に把握仕様という試みである。
「ヒナ、つかまっていろよ!」
「うっひょー! アメンボよりはやーい!」
 ゲイルの髪につかまったピクシーが足をばたばたさせた。
「早速特技を活かしているようじゃな」
 『樹の娘』檜山 樹香(CL2000141)は自分の跨がったイルカに気にせず走るように伝えると、左右を固めてきたイルカたちに捕縛蔓を放った。
「うわわっ、なんだこりゃ!」
「動きがにぶる!」
 樹香の下でイルカがくつくつ笑った。
「やるねえお嬢ちゃん。四百年もたつと人間は植物も操るようになるのかね」
「……なんびゃくじゃと?」
 そんな樹香の横をすり抜けていく『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)と契約イルカ。
「そのまままっすぐ走って」
「いいの? 僕ぶつかっちゃうよ!?」
「大丈夫。見ていてね」
 理央は符を頭上に翳すと、たちまちそれを水の竜へと変化させた。
「わあっ、すごいね! 僕たちと一緒だ!」
「……一緒?」
 竜が理央が通るラインの浮き石を次々に破壊していく。
 これ幸いと後続のイルカたちもそのおこぼれに預かっていた。
 一方で『二兎の救い手』明石 ミュエル(CL2000172)は、浮き石の上をぴょんぴょん飛んでいく形で乗り越える手にでていた。
「一緒に、慎重にいこうね……」
 ジャンプか潜るかの二択だったイルカたちには新鮮だったようで、ミュエルはイルカと手を繋いでぴょんぴょん跳ねている。
「あのやり方も楽しそうかも」
 『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)はぷはあと言って水面から顔を出した。
 契約イルカに頼んでちょいちょい水面に顔を出しながら潜水移動してもらっているのだ。
「呼吸は持ちますけど、周囲は確認しないと……」
 そんな彼女の足下を『エピファニアの魔女』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)が契約イルカと共に泳いで抜けていく。
「うかうかしてられない、いそがなきゃ!」
 御菓子は契約イルカに呼びかけると潜水を開始。水中を猛スピードで進みだした。

 覚者たちを最初に悩ませたのはなんといっても迷路ゾーンだ。
「左手の法則を使えば……」
 澄香は迷路で言うところの左手の法則。つまり壁に手をつけていればいつしか出口にたどり着く法則を利用していたが、全速力での移動スピードがイルカたちよりもちょっと遅い上に確実な遠回りとなる。同じ道に何度も入ってしまわない分リスクは多少回避しているが、流石に最短ルートというわけにはいかないようだ。
 一方で樹香はベランダに飾られた花に呼びかけて直近の記憶をサーチしていた。
「む、わかったぞ。この先は行き止まりじゃ。右に進もう」
「便利だなあ……」
 植物を見つけるたびに止まっているので多少ロスはあるものの、迷いは少なくゴールへと進んでいる樹香。
 だがそんな彼女たちよりもずっと早いスピードでゴールを目指す組があった。
「反響音を探れば……!」
「おのずと地形は理解できるはず……!」
 ゲイルと御菓子は猛スピードで最短ルートを走っていた。
 具体的なことを言うと、御菓子自身が高い声を発して反響音を聞き分け、空間をビミョーに把握しているのだ。水中ソナーのそれに近く、材質や気圧で音が変わるのであんまり細かく使えない技術ではあるが、こうした迷路の突破には適していたようだ。
 一方のゲイルはそんな御菓子の声を利用しつつ鋭聴力を活用。かなり遠くで反響する音を頼りに進んでいるようだ。
 音の違いを聞き分ける能力と小さな音でも拾う能力では根本的に違うのだが、この場合は似たような使い方ができているらしい。
 ちなみにこうしていて気づいたが、野生動物でいうイルカが本来持っているソナー的能力がここのイルカたちには備わっていないようだ。
 足ひれで地面を歩いたり喋ったりする辺りでうすうす思っていたが、どうもここのイルカたちは古妖のたぐいであるようだ。

 迷路を抜けた覚者たちは、すぐさま激流の洗礼を受けることになる。
(潜って行けば楽かと思ったが……やはりスピードが確保できんな)
 結唯は普通に潜水移動をしつつ、前方集団の様子を探った。
「わわっ!」
 予め水着姿になっていた理央はそれはもうびしょ濡れである。水着だからいいっちゃいいが、前から横から浴びせられる激流に思いっきり翻弄されていた。
 それはイルカたちも同じようで、水流になんとか耐えようとするもかなりころころやられているようだ。
「うわわー! 目が回るよー!」
 イルカなのに、泳ぎがそこまで上手くないという。
 そりゃ陸上のお家に暮らしていれば泳ぎも劣化しそうなものだが、理央にはもっと根本的な問題であるようにも思えた。
(この子たち……もしかして……)
 その横をまっすぐ駆け抜けていくラーラ組。
「イルカさん、このルートです! まっすぐ!」
 目をこらして水流の弱いエリアを見極めたラーラが、激流を最大限にかわしながらどんどん順位をあげていた。
 その更に前を、殆ど追いつかれずに進んでいるのはミュエルだ。
 ラーラと違って激流を避けきれていないが、うまいことバランスをとって流れを逃がすように進んでいるのだ。
 迷路ゾーンでお花に道を聞いていたのも相まって、ミュエルの順位はかなりのものだ。
「この調子で……いけば……っ」
 激流にわぷっとなりながらも、ミュエルはラストである直線ゾーンへと突入したのだった。

 それまで障害物に悩まされていただけあって、直線ゾーンでのイルカたちはここぞとばかりに相手走者への妨害を始めていた。
 水面からぴょんと飛び上がるや、口から水鉄砲を放って相手の速度を落とすのだ。
「想像したよりずっと厳しい妨害だ! ヒナ、中に入っていろ!」
「頭の中に?」
「恐いことをいうな! 懐だ懐!」
 ゲイルは耳の穴をぐいーっと広げようとしていたピクシーを掴んで懐に入れると、横から浴びせられた水鉄砲を腕でガードした。
 オールがはじけて飛んでいく。
「むっ、しまった!」
「お先に失礼!」
 樹香は捕縛蔓を左右に放ちながら、妨害してくるイルカを次々に無力化していった。
 操縦を契約イルカに任せている分、こちらは妨害に集中できるのだ。
「行くとしようかの。ワシ等一位を目指そうぞ、イルカさん!」
「うむ……!」
 樹香はレース前、一目見た時からこのイルカと契約することに決めていた。
 おおらかそうな外観と、どこか熟練の風格をもったこのイルカなら任せられるのでは、と思ったからだ。
「檜山さんですか、負けませんよ!」
 横並びになった澄香が空圧弾を発射。
 樹香はそれを打ち払うと、捕縛蔓を発射した。
 急速に浮き上がって回避する澄香。
「……」
 そうして出来たエアポケットを駆け抜けようと走る結唯。
 水上歩行を活用しているだけあって、狭い隙間を駆け抜けるのも割と容易なようだ。
「「むっ……!」」
 樹香と澄香が、それぞれ目をギラリと光らせた。

 そんな彼女たちの少し前を走るのは御菓子と理央。
 途中のあれこれは別として、やはり契約イルカが速度アップに集中して覚者たちが妨害の対策になるというのは相性がいいらしい。
 理央はイルカに体力と気力の回復術式をかけ続け、御菓子はイルカから教わった『激励の歌』で呼びかけながら身を低くして進んでいた。
 それぞれの中で、イルカとの思い出が脳裏をよぎる。
 理央がこの遺跡にやってきたのは、ピクシーのお誘いもさることながら、ファイヴという研究機関において神秘技術あふれる古代遺跡の探索は大きな価値をもたらすからに他ならない。
 前回取得してファイヴに送った無限樹の勾玉も、まだ研究段階ではあるものの、きっと高い価値をもつだろう。
 しかしこの水鏡遺跡で新たな勾玉を獲得したのならば、どうだろう。
 研究機関としては一度研究したい。本音だ。
 しかしこれがイルカたちの宝物であったのなら、奪うのは忍びない。
 そんな葛藤を抱く理央に、契約イルカはこう言った。
 『楽しくレースをしようよ! その後のことは、その後で考えればいいんだよ!』
 御菓子も同じだ。
 契約条件を求めたとき、契約イルカは楽しくレースをすることを求めた。
 楽しさなら得意分野である。御菓子はイルカにいくつかの歌を教わり、それを歌いながらイルカに指示や激励を飛ばすことにした。
 イルカたちはお互いの気持ちをやりとりするとき、歌を用いるという。
 御菓子が今使っているのは、そんな歌の一つである。
 顔を上げる二人。
 先頭集団までおよそ二メートル。
 今先頭を走っているのはラーラ組とミュエル組だ。
 棘散舞を投げるミュエルと、それを弾くラーラ。しかし妨害行為もゴールが近づけば自ずと収まり、ゴールラインへどれだけ全力で加速できるかの勝負になってくる。
 時間が急速に引き延ばされ、二人はレース前の記憶を思い出していた。
 ミュエルは当初、イルカさんにお菓子をあげるから契約してほしいと頼んだ。
 イルカは喜んで契約に応じたが、その次に持ちかけた賞金は譲るからという話に首を傾げたのだ。
 『しょうきんって、なあに?』
 これはミュエルと同じくお菓子で契約したラーラもした話だが、イルカの街にはお金という概念がないという。
 どころかこのレースに優勝賞品にあたるものはないらしい。
 ならなぜ、こんなレースをしているのか。
 それはひとえに、『楽しいから』に他ならない。
「私……こうしてイルカさんと遊ぶの、夢だったんですよ」
「アタシたちに、みんな、びっくりしてないかなって……思ったけど」
 でも、みんな楽しんでる。
 ラーラとミュエルはゴールへの突入姿勢をとった。
 水と風を追い越していく。
 やがて契約イルカの鼻が、ゴールテープを切った。


「レース優勝者は……ミュエルさんとこちらのイルカさんです!」
 表彰式。壇上に上げられたミュエルはもじもじした様子で『おめでとう勲章』みたいなものを受け取った。
「あんたたち、よく頑張ったね。レースを見させて貰ったよ」
 イルカネキが花の蜜を吸いながらニコニコと笑った。
 ニコニコ笑うイルカというのもなかなか妙な話だが、歩いて喋って花の蜜を吸っている時点で野生動物のイルカと違うのはわかるところだ。
「もう気づいてるかもしれないけど、アタシらはこの遺跡と一緒に作られた人工精霊さ。水から生まれて水に還り、また生まれる。だからもしあんたたちが人を傷付ける武器を使ったとしても、問題は無かったんだけどね」
 妨害方法を限定しなかったのはそういうことか、と澄香たちは納得した。
 同時に彼らが遺跡の一部であり、今足下に流れている水と同じものだということも、うっすらと理解した。
「アタシらの役目は、無限樹を通ってやってきた奴がどんなモンか見極めることさ。無限樹の試練を乗り越えるだけの能力があっても、人格が汚かったら受け入れられないからね」
 たとえば優勝すれば望みが叶うと勘違いして、卑劣な妨害や過度な暴力を働くかもしれない。
 たとえばこの街を独占したくなって力で支配しようと試みるかもしれない。
「けどあんたたちは、アタシらと仲良くしようとしてくれた」
 理央やミュエル、ラーラや御菓子たちを眺める。
 ゲイルや結唯の顔も見て、こくんと頷いた。
「一つの目標を一緒に達成するのじゃ。仲良くせねば」
 そう言った樹香にも、イルカネキは頷いてみせる。
「その通りだよ。人と妖精はきっと何百年も交わらないで暮らすだろうけど、永遠にってわけにはいかない筈さ。そうなったとき、お互いに喧嘩しないように橋渡し役が必要なのさ。もしかしたら不本意かもしれないけど、あんたたちはその役目を担うことになるんだよ」
 イルカネキはそう言うと、『約束の歌』を歌った。
 歌を聴いた町中のイルカたちが水の中に飛び込み、どんどん水かさを上げていく。
 不自然なまでにかさの上がった水面は町を飲み込み、やがて空までどんどん高く登っていった。
 遠くまで見通せるゲイルは既に気づいていたが、この街はどうやら球形の壁で覆われ、『動く空の絵』によって外の風景を再現していたようだ。
 そして奇妙なほどにまぶしい太陽は……。
「ううん、あれは太陽じゃない」
「穴、ですね。向こうから光が漏れてます」
「じゃあ……」
 顔を見合わせる覚者たち。
 イルカネキはとぷんと水の中に溶け込むと、彼らを穴の向こうへと吹き上げた。
「行っておいで、『火影の遺跡』へ。ちょっと厳しいことが、起こるかも知れないけれど……くじけるんじゃないよ」
 光る穴の向こうへと放り込まれる覚者たち。
 だがそんな彼らの手の中には、水のひとかけらが残っていた。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
『えらいぞ勲章』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:明石 ミュエル(CL2000172)